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鹿の国から'24・・・・・・・・FP汀

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保険とインフレについて



保険とインフレについて                                    汀 光一

1. 生命保険金の価値

 現在、地域通貨というものが、世界中で3000種近く、日本でも300種類ほどあり、様々な形で広がっている。
(1)利子がつかないので貯蓄しても意味がない。
(2)あくまでも自分が作りだすサービスを他人のサービスと交換するためのツールである。
(3)通常通貨との換金はできない。などの共通した特徴がある。また、物価上昇しても、サービスとの交換価値が下がらない通貨としても注目されている。今後年金が少なくなる分、老後の生活にとってこの地域通貨の利用価値が増えていくはずである。しかし、そうなれば、地域通貨の発達した地域に引っ越したりする人も出てくるかもしれない。

 以前生命保険営業の現場で、将来の保険金の価値に関して、よく次のような疑問をお客様から投げかけられた。「今後インフレになると、30年後の1000万円の保険金の価値は、今よりずっと下がるのではないか?」
確かに、毎年のインフレ率が平均3%ならば、30年後の1,000万円は412万円の価値しかないことになる。30年後も1,000万円の価値を保つためには、保険金は2,428万円に増えていなければならない。2.5倍弱だ。

 戦中戦後のインフレの話を持ち出すまでもなく、消費物価指数は30年前の4倍弱になっていることを考えればありえる話だ。ちなみに映画のチケット代は、10年前(平成元年)は約1,500円、20年前は1,200円、そして、30年前はわずか400円だった。現在のチケット代は1,800円で、30年前と比べると4.5倍。ここ最近のデフレは、物価を押し下げているが、今後また上昇に転じることも、十分に考えられる。

 10年以上前、某保険業界紙に毎週コラムを連載していたときに、長期の定期保険は、物価上昇していくと、保険金の価値が逓減(だんだん減っていく)していく保険であり、その場合逓増(だんだん増えていく)定期保険の方が、保険金価値が一定に近い保険ではないかと書いた。また、必要保障額が年々下がっていくと考えれば、長期の定期保険の価値が逓減するのはちょうどいいかもしれない。さらに逓減定期保険は、物価上昇率が高いと保険金価値が目減りしすぎて、必要な保障額を準備できないかもしれないと指摘した。これは、当時までの保険会社の必要保障額の計算が物価上昇率を考慮していなかったことから発展した話だった。解約返戻金推移表も、当初支払った保険料と将来の数十年後の解約返戻金と比較した「返戻率」を計算しているが、お金の価値の違うものを比較していることになる。一方、以前は、物価スライド保険というものがあった。変額保険が発売されて、ほとんど販売されなくなってしまったが、意外にいい保険だったのではないかと思う。

 …物価の上昇を考えて、保険金を考えたり、見直したりする必要があることを頭の隅に入れておこう。

2.その他変額保険などはインフレに強いのか。

 配当がついてない終身保険や年金保険なども、物価上昇により、将来どの程度役に立つのか懸念される。しかも、今後、予定利率が途中で下がることにでもなれば、終身年金などの将来価値は極端に減少することになるだろう。実質的な交換価値としては、年金というよりも小遣い程度のものになるかも知れない。また、予定利率の高かった頃の定額終身保険は保険料が安くて、解約返戻金が確定している分いい。しかし、インフレの中で配当が少なければ、将来の保険金価値が逓減していく終身保険である。それで最近のアカウント型の終身移行保険(注1)を思い出したが、老後に数十万円位の終身保険に移行しても、香典返しの役に立つかどうかというところである。また年金に移行するとしても、アカウントの利率がどのくらい上昇してくれるかによるが、物価上昇を上回る率でないとほとんどメリットは少ないと言えよう。 

 変額年金保険は、銀行が販売すると投資型年金と呼び名が変わる。「変額保険」の名は、バブルの頃に悪いイメージで広まってしまったと避けられているようだ。その変額年金の場合、運用利率は、物価上昇率+手数料率くらいないと価値は目減りしていくことになる。すると平均すれば4.5%程度の運用利率が最低ラインではないだろうか。それ以上運用できない変額年金は、価値が逓減していく年金となる。変額年金は、本来、運用して将来の年金の価値が下がらないことがコンセプトである。それが、市場の金利に連動するようになった銀行預金のほうが、30年後よいという結果になったというのでは意味がない。

 また、変額終身保険は、現時点で保障目的で加入するなら、基準保険金が保障され、予定利率が定額保険より高いので保険料も安くてよい。しかし、いずれにしてもインフレの中で運用利率がよくなければ、将来の保険金価値は逓減していくのである。

 ・・・お金の価値は金額ではなく、交換価値であると考えよう。老後生活に備えて、これからは交換価値が変わらない地域通貨の役割にも注目しよう。

(注1)保険料払込期間中の死亡保障はその時点の積立金となり、払込期間満了時にその時点の積立金を原資として終身保険や年金に移行する(積立を継続できるものもある)保険で、定期的に利率が変動する。
 この保険を積立部分とし、定期保険(特約)や医療保険(特約)などの保障部分をセットした貯蓄と保障を分離した商品。積立部分を保障部分の保険料に活用したり、積立部分と保障部分の保険料割合を変更することで、転換せずに保障の見直しを行うことができる。


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